心タンポナーデは,Beckの三徴(血圧低下,頸静脈怒張,心音減弱)が知られているが,今日では血圧低下や頸静脈怒張とともに心臓超音波検査で心嚢液貯留および右室奇異性運動と心拡張障害を認める場合に診断される.心損傷,心筋梗塞,急性大動脈解離が原因の場合,急激に心嚢液が貯留するため,成人では100mL以下の血液でもその急激な血液充満に耐えきれず,心タンポナーデとなりうる.その際,緊急処置として施行される重要な手技が心嚢穿刺と心嚢開窓術である.
また,感染性心内膜炎,癌性心膜炎,自己免疫性疾患,甲状腺疾患などでも心嚢液貯留を認めるが,その際,診断目的または大量に貯留している場合の治療目的で施行する.
A心嚢穿刺法
1.適応
1)心タンポナーデの解除
2)診断的穿刺
3)大量に貯留した心嚢液の治療的穿刺
2.禁忌
1)絶対的禁忌:なし
2)相対的禁忌:①凝固異常,②肺高血圧症(収縮期肺動脈圧>70mmHg),③心