診療支援
治療

頭蓋直達牽引法 [■外傷処置]
☆☆
skull traction,skull tongs traction
上尾光弘
(大阪警察病院・外傷センター長)

A適応と注意点

 脱臼や不安定型骨折を伴う頸椎損傷では,整復操作や整復位保持の目的で頭蓋直達牽引が実施される.頭蓋直達牽引には頭蓋を把持する専用の器具が必要であり,クラッチフィールド型,バートン型,ガードナーウェルス型,ハロー型などが流通している.牽引器を頭蓋に固定する際,固定ピンの頭蓋内迷入による脳損傷や,牽引操作に伴う2次的脊髄損傷を引き起こすなど重篤な合併症があるので,手技に習熟した医師の指導の下で実施しなければならない.

B器具の固定

 クラッチフィールド型,バートン型,ガードナーウェルス型では,両側外耳孔の延長線上で局所麻酔下に左右対称にピンを挿入して器具を頭蓋に固定する.器具装着法の詳細は各々の使用説明書を参照していただきたい.

 筆者らはハロー型を好んで用いている.整復後にハローベストで整復位を保持できる利点があるからである.適切な大きさのハローリング(またはトング)を準備し,前後,左右対称的な4本のスカルピンを挿入して固定する.前方ピン挿入点の目安は目尻から1横指後方かつ3~4横指頭側で髪の毛の生え際(固定ピンが頭蓋底にかからないこと,上眼神経や浅側頭動脈,側頭筋を避ける位置)で,後方ピンは前方ピンの後方垂直線上に自動的に決まる.スカルピン挿入部の見当を付けて局所麻酔を行い,メスで挿入部皮膚を縦切開し,前方のスカルピンを左右バランスよく締め込んでいき骨に達したら同様にして後方ピンを締め込む.トルクレンチまたはスプリングピンを使用し,あらかじめ決められたトルクがかかるまでバランスよく締め込む.4本のピンでハローリングを頭蓋にしっかり固定できたら最後にピンロックナットを締め付けピンが抜けないよう固定する.

C牽引,整復時の注意点

 枕や背中のマットなどで牽引の方向を微調節する.伸展位で牽引する場合は後頭部に褥瘡ができないよう注意する.最初は3~4kgの(頭の牽引に2.5kg

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