診療支援
治療

damage control surgery(DCS) [■外傷処置]
☆☆☆
damage control surgery(DCS)
内田健一郎
(大阪公立大学大学院准教授・救急医学)

治療のポイント

・大量出血に伴い生理学的に破綻した患者を救命するための段階的治療戦略である.

・特に外傷患者において,死の3徴(低体温・凝固障害・代謝性アシドーシス)を回避する.

・以下の3要素から構成される.

 1)根治的な損傷臓器修復にとらわれず,止血と汚染の回避を念頭にした初回迅速手術

 2)集中治療室における生理学的機能の回復(復温や凝固の補正など)

 3)臓器損傷修復・再建などの根治術や閉創のための計画的再手術(planned reoperation)

・近年は非外傷救急外科手術症例にも応用されている.

Adamage control resuscitationとDCS

 重症外傷における出血性ショックなどの状況において,患者の生理学的予備能回復が遅滞すると,循環不全から低体温・凝固障害・代謝性アシドーシスが生じる.これらをdeadly triad(死の3徴)とよび,臨床的出血傾向が出現した場合の死亡率は85%,体温が32℃となった場合には死亡率は100%とされる.

 この3徴が揃う前に迅速に決断,施行する一連の外傷蘇生をdamage control resuscitationといい,止血完了前には最低限の臓器灌流を維持する低血圧の許容,晶質液輸液量の最小限化と早期輸血開始,massive transfusion protocol(大量輸血プロトコル)の発動,その際の製剤の投与比率,トラネキサム酸の適切な使用や一時的閉腹時の管理などが重要となる.その一環として行われる,迅速な止血術や汚染回避を主眼とする初回迅速手術から計画的根治術までの段階的蘇生手技がDCSである.

BDCSの適応

 重要であるのは上記3徴が揃う前に発動することである.具体的要件を以下に示す.

 1)代謝性アシドーシス(pH<7.2 or BE<-8mmol/L)

 2)低体温(<35℃)

 3)凝固障害(臨床的出血傾向または

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