診療支援
治療

救急医療における感染防御対策 [■その他]
infection control and prevention in emergency medicine
松田直之
(名古屋大学大学院教授・救急・集中治療医学)

ニュートピックス

・Global Sepsis Alliance(世界敗血症連盟)は,毎年9月13日を世界敗血症デー(World Sepsis Day)と定めた.

治療のポイント

・緊急時対応として,感染防御策を徹底する.

・感染防御策では,①空気感染予防策,②飛沫感染予防策,③接触感染予防策を実施する.手指衛生のタイミングについては,WHOの推奨する手指衛生の5 moments(5つの瞬間)を遵守する.

 救急医療では,診療における患者との接触を前提として,すべての操作において感染防御策を徹底する.

A救急診療における感染予防策の重要性

 救急医療では,救急車による患者搬入より前に,ガウン,手袋,帽子などを着用する.使用した手袋やガウンなどは,廃棄ボックスなどの適切な場所に廃棄し,テーブルなどの作業環境に放置してはいけない.

 感染経路として,①空気感染,②飛沫感染,③接触感染の3つの経路に注意する.

B空気感染予防策

 空気感染は,狭義には「飛沫核感染」「塵埃感染」「エアロゾル感染」に分類される.空気感染として,肺結核,麻疹ウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルスに注意する.結核感染患者は,年間約1.5万人であり,高齢社会における増加に注意している.2週間以上の持続する咳や痰,また高齢者の食欲不振や体重減少では,救急車搬送において結核に注意した空気感染予防策とする.

 塵埃感染は,ノロウイルスやレジオネラのような微生物に汚染された塵埃や気流を吸い込むことにより発症する.

 エアロゾル感染は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)で取り上げられた感染経路である.エアロゾルは,粉塵(dust),煤塵(smoke dust),フューム(fume),ミスト(mist)などの総称であり,その大きさは1nmから100μmと広範である.SARS-CoV-2のように,マイクロ飛沫を形成する場合,マイクロエアロゾル

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