治療のポイント
・中毒でさまざまな症状が出現し,全身に及ぶ障害が出るが,原因薬毒物にかかわらず初期対応はほかの救急病態と同様に気道,呼吸,循環,意識レベルの評価と処置である.
・その際,治療にあたる医療者が中毒物質に汚染されて2次被害が生じないように配慮する.
・これらを行ったうえで中毒の原因となっている薬剤や毒物の吸収阻害,排泄促進,拮抗薬投与へと進む.
A初期対応
1.安全管理
標準予防策を基本として傷病者に接する.原因薬物によっては,医療者への2次被害が生じうる.特に揮発性の高い化学薬品の場合は注意を要する.多くの場合,脱衣やタオルなどで皮膚に付着した毒物を除去する乾的除染で十分である.揮発性の高い化学薬品を服毒している症例では,嘔吐やのちに述べる消化管除染の際に処置室が汚染される可能性があるため注意を要する.
2.蘇生
重篤な急性中毒の場合,心肺停止状態で救急搬送されることがある.この場合,通常の二次救命処置の手順に沿って蘇生を行う.なお,急性中毒の場合は薬剤の影響が消失するまでは心拍再開が期待できない.このため経皮的心肺補助装置を用いた蘇生が必要となることもある.その際,院内の救急部門や集中治療部門,循環器専門医との連携が必要となる.
3.気道
意識障害を呈しており,舌根沈下している場合や嘔吐の場合など,気道確保が困難な症例には躊躇せず気管挿管を選択する.また,来院時には気道が保たれている場合であっても,気道分泌物によって気道の維持が困難になることが予想される症例では気管挿管を選択する.
4.呼吸
適切な換気ができているかどうか,酸素化が十分であるかどうかを評価する.服毒した物質によっては,失調性の呼吸を呈することがある.また,原因物質が明らかでない場合が多いことから,呼吸状態の悪化については予測が立たないと考えて,人工呼吸管理については躊躇せずに進める.
5.循環
不整脈や低血圧