診療支援
治療

酸素療法
oxygen therapy
石原英樹
(八尾徳洲会総合病院・副院長(大阪))

治療のポイント

・酸素吸入により吸入気酸素濃度(FiO2)を上げ,肺胞気酸素分圧,動脈血酸素分圧(PaO2)を上昇させ,低酸素血症を改善・予防するのが目的である.また,呼吸仕事量の軽減,肺高血圧症・右心不全の予防・改善効果も期待できる.

・ハイフローセラピーの普及によって,酸素療法に新たな選択肢が増えた.

 酸素療法とは,空気中より高い濃度の酸素を投与することである.生体内では,酸素は生命維持に必要なエネルギー代謝に利用されており,欠乏すると生命維持が困難になる.したがって,酸素は常に取り込み・輸送して組織に届ける必要があり,呼吸器・循環器系の障害により組織が低酸素状態に陥った場合は,酸素療法が必要になる.

◆病態と診断

A急性期

・急性低酸素血症に対する酸素療法適応の目安は,一般にPaO2:60mmHg以下,SpO2:90%以下であるが,呼吸不全徴候がある症例の場合,PaO2:60mmHg以上,SpO2:90%以上であっても酸素投与を考慮する.

B慢性期

・慢性呼吸不全に対する酸素療法の社会保険適応基準を表1に示す.呼吸器疾患の場合は,慢性呼吸不全症例で,最大限の薬物療法や包括的呼吸リハビリテーションを実施したうえで適応を判断する.

◆治療方針

A酸素療法の選択と進め方

 低酸素血症に対する酸素療法を行う際には,呼吸不全の病態を理解する必要がある.呼吸不全には,高CO2 血症を伴わない低酸素血症(Ⅰ型)と,高CO2 血症を伴う低酸素血症(Ⅱ型)がある.Ⅰ型呼吸不全は酸素療法の適応となるが,Ⅱ型呼吸不全には,酸素療法だけではなく何らかの換気補助が必要となることがある.また,著明な高CO2 血症状態の患者に高濃度酸素を投与すると,CO2 ナルコーシスに陥る危険があるので注意が必要である.

 以上のことを念頭におき,種々のモニタリング,臨床症状の変化を観察しながら,酸素流量・濃度を調整する.以下に病

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