診療支援
治療

急性呼吸促迫症候群
acute respiratory distress syndrome(ARDS)
長谷川隆一
(獨協医科大学埼玉医療センター学内教授・集中治療科)

頻度 ときどきみる

GLARDS診療ガイドライン2021

ニュートピックス

・自発呼吸を残した補助換気はガス交換に有利だが,強すぎる自発呼吸は経肺圧を上昇させARDSの肺傷害を悪化させる.自発呼吸を残して補助換気を行う場合は鎮痛・鎮静薬を併用して自発呼吸をコントロールする.

治療のポイント

・「肺保護換気戦略」を遂行する.1回換気量(Vt:tidal volume)を4~8mL/kgに制限,呼気終末陽圧(PEEP:positive end expiratory pressure)を上げて肺をリクルートメント,プラトー圧を制限する(目安は30cmH2O以下).

・重症例では上記戦略で管理困難な場面も見受けられ,腹臥位換気や体外式膜型人工肺(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)といったステップアップを検討する.

・間接的には人工呼吸器関連肺炎(VAP:ventilator associated pneumonia)の併発や肺組織の線維化が予後を悪化させるため,VAP予防や線維化対策の低用量ステロイドの併用が推奨される.

・悪化したガス交換の改善が主であるが,同時に循環動態(血圧や心拍数,乳酸値など)の安定化と原疾患への治療を遅延なく行う.

◆病態と診断

A病態

・ARDSの原因となる主な病態:肺炎(59.4%),肺以外を原因とする敗血症(16%),誤嚥(14.2%),非心原性ショック(7.5%),外傷(4.2%),輸血後(3.9%)(JAMA 315:788-800.2016).

・敗血症や肺炎,外傷といった肺内外のさまざまな病態に随伴して重度の呼吸困難低酸素血症,肺コンプライアンスの低下をきたし,X線で両側びまん性浸潤影を呈する.

B診断

・2012年に発表された「Berlin Definition」に基づいて診断する.

1)発症時期:何らかの侵襲もしくは呼

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?