診療支援
治療

上部消化管内異物摘出法
removal of foreign bodies in upper GI tract
三上達也
(弘前大学大学院教授・先制医療学)

治療のポイント

・問診と画像検査で異物の性状と部位を確認し,摘出の必要性を判断する.

・多くの異物は内視鏡的に摘出可能であるが,有鈎義歯などのように大きくて鋭利な部分を有する異物の場合は,内視鏡的摘出が困難なこともある.

・内視鏡的に摘出する場合には,異物に適した鉗子類をあらかじめ準備する.

◆病態と診断

A病態

・小児,認知機能が低下した高齢者に多く,異食症では繰り返すことが多い.

・本来,口にしない異物(電池,PTP包装シートなど)のほかに,魚骨,アニサキス,消化管狭窄を有する例では食塊も摘出の対象となりうる.

・異食症では,想定外のものを誤飲していることもあり,摘出に難渋することがある.

B診断

問診で異物の性状を把握する.

画像検査で,異物が消化管のどこにあるかを確認する.

・理学所見で消化管穿孔の疑いがあれば,CTを撮像する.

◆治療方針

 異物の種類と存在部位によって,対応が異なることを理解する.食道内に停滞したリチウム電池のように,時間経過に伴って危険が増すものは早急に除去する必要があるが,閉塞・穿孔の危険がなく,人体に悪影響がない異物(ビー玉,差し歯など)は自然排出を期待する.

 異物が幽門輪を越えてしまっている場合には,自然排出を期待できる一方で,鋭利なものは消化管壁に突き刺さる場合もあるので,経過観察する場合は注意が必要である.

A内視鏡的異物摘出術

 緊急内視鏡を行う場合には,事前に静脈路を確保しておく.成人では必ずしも鎮静の必要はないが,小児では鎮静が必要なため,小児科あるいは麻酔科と連携して行う.異物に適した種々の鉗子・スネア・回収ネットなどを用意する.鋭利なものは,回収時に消化管壁を損傷しないように,先端フード,オーバーチューブなどを併用して愛護的に回収する.

B内視鏡的摘出後

 鋭利なものを内視鏡的に摘出したあとは,もう一度内視鏡を挿入して消化管壁に損傷がないかを確認する.

 消

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