診療支援
治療

消化管の悪性リンパ腫
malignant lymphoma of the gastrointestinal tract
西川 潤
(山口大学大学院教授・基礎検査学)

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GL造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(2020)

治療のポイント

Helicobacter pyloriH. pylori)陽性の限局期胃MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫に対しては除菌療法を施行する.除菌療法で奏効が得られない場合には,放射線療法が推奨される.

・濾胞性リンパ腫(FL:follicular lymphoma)は低悪性度B細胞リンパ腫であり,無治療経過観察が選択肢となる.

・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)に対してはR-CHOP療法が推奨される.

◆病態と診断

A病態

・消化管の悪性リンパ腫は消化管原発悪性腫瘍のなかでは比較的まれであるが,節外性リンパ腫の30~40%を占める.

・B細胞リンパ腫が多く,組織学的にはMALTリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の頻度が高く,最近小腸の濾胞性リンパ腫(FL)が増加している.

・MALTリンパ腫は粘膜関連リンパ組織より発生する低悪性度B細胞リンパ腫である.胃MALTリンパ腫のH. pyloriの感染頻度は90%以上であったが,最近低下してきている.また,特有な染色体異常として,API2-MALT1,t(11;18)転座が知られている.

B診断

消化器内視鏡検査および生検によって診断する.

・胃MALTリンパ腫は0-Ⅱc型早期胃癌類似の陥凹や,凹凸顆粒状・敷石状粘膜からなり,胃炎類似所見を呈する例が多い.

・DLBCLは限局した腫瘤形成型が多く,しばしば潰瘍を形成し,1型ないし2型進行癌との鑑別を要する.潰瘍辺縁の周堤状隆起に不整が乏しい,耳介様周堤が特徴的である.

・消化管リンパ腫の肉眼形態は多彩であり,ポリープ様病変が消化管の広範囲に多発し,ポリポーシスの状態を呈す

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