頻度 ときどきみる
治療のポイント
・原疾患に付随することが多い疾患であることを念頭におく.
・治療では原疾患の治療を行うことを原則とする.
・対症療法として蛋白補充と浮腫の軽減を行う.
・微量元素やビタミンの欠乏に留意し,補充を行うことが重要である.
◆病態と診断
A病態
・胃腸粘膜から管腔内に血漿蛋白が異常に漏出し,低蛋白血症をきたす症候群である.
・成因として消化管粘膜の異常,脈管系の異常がある.
・粘膜上皮の障害では,上皮細胞間隙や潰瘍からの物理的な蛋白漏出が考えられる.
・脈管系の異常では,リンパ管圧の上昇によるリンパ液の逆流が腸管内へ漏出すると考えられる.
・腸リンパ管拡張症,クロンカイト・カナダ症候群,メネトリエ病,Fontan手術後などで認められる.
B診断
・下痢や浮腫などの症状から本症を疑い,血液検査にて低蛋白血症,低アルブミン血症を確認する.
・α1 アンチトリプシンクリアランス13mL/日以上や99mTcヒト血清アルブミンシンチグラフィで明らかな漏出を認めるなど,消化管からの蛋白の漏出を確認する.
・低蛋白血症をきたすほかの病態を除外すること.摂取不足,蛋白合成低下,肝不全,ネフローゼ,吸収不良症候群,慢性消耗性疾患,担癌生体など.
◆治療方針
蛋白漏出性胃腸症治療の目的は原因となる原疾患を同定し,治療を行うことである.対症療法として,栄養剤の補給や浮腫に対する利尿薬の投与を行う.Fontan手術後では外科的またはカテーテル治療によりFontanルートの物理的狭窄解除やFontan fenestrationの作成,拡大および弁逆流への対応を行うことがある.いずれにしても確立された治療や保険適用のある治療が少なく,症例ごとに方針を検討する必要がある.
A対症療法
1.低蛋白血症への対応
低脂肪,高蛋白の栄養,中鎖脂肪酸の補給を行う.中鎖脂肪酸は小腸ではなく大腸で吸収され,リンパ系を迂回して