頻度 よくみる〔生涯罹患率7%,虫垂切除術:10万人あたり年間約48人(2013年NCDデータより)〕
GLエビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017第Ⅱ部小児急性虫垂炎診療ガイドライン
治療のポイント
・急性腹症では念頭におき,病歴聴取と腹部診察に基づき,画像診断,検査所見より診断に至る.
・治療方針は,病態や患者状態や施設特性により決定されるが,緊急手術から保存的治療まで多岐にわたる.
・外科治療では保存的治療ののち待機的虫垂切除術を行う頻度が増加し,開腹ではなく腹腔鏡下虫垂切除術が選択されることが多くなっている.
◆病態と診断
A病態
・糞石,リンパ組織の過形成,炎症などにより虫垂内腔の狭窄や閉塞が生じ内圧上昇をきたす.それに伴い腸内細菌の異常増殖や循環障害が生じ,細菌感染および炎症が進行すると考えられている.
・病理学的には炎症の程度の軽いものから,カタル性,蜂窩織炎性,壊疽性に分類される.
・穿孔をきたしたものは穿孔性虫垂炎,膿瘍やそれにより腫瘤を形成したものは膿瘍(腫瘤)形成性虫垂炎と称される.
・臨床的には,カタル性や蜂窩織炎性にとどまるものを単純性虫垂炎とし,壊疽性虫垂炎,穿孔や膿瘍を形成するものを複雑性虫垂炎と分類する.
B診断
・問診:虫垂切除術の既往,女性では妊娠の可能性を確認する.初期には悪心,嘔吐,上腹部痛や心窩部痛を呈することが多く,徐々に疼痛は右下腹部に移動・限局する.また炎症の進行に伴い発熱も認めることが多い.
・腹部所見:右下腹部の限局した圧痛(McBurney's sign),反跳痛(Blumberg's sign),筋性防御などを認める.小児,高齢者,妊婦では,症状が典型的ではないことも多く注意を要する.
・検査所見:体温上昇,白血球増多,CRP上昇などの炎症徴候が認められるが,発症後のタイミングによってはそれらが認められないこともある.
・画像診断