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GL大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン(2017)
Ⅰ.大腸憩室
治療のポイント
・大腸憩室出血ではNSAIDsや抗血栓薬の定期内服があれば一時休薬を検討する.
・大腸憩室出血の内視鏡的止血術はクリップ法が中心であるが,ほかにエピネフリン局注法,凝固法,結紮法がある.
・大腸憩室炎の初診時に合併症(膿瘍,穿孔,腹膜炎)の評価を行ったうえで治療方針を決める.
・大腸憩室炎で入院を要する際には,絶食による腸管安静が勧められる.
・大腸憩室炎に膿瘍を合併した際に膿瘍径が3cm以下であれば絶食,抗菌薬を初期治療とし,3cm以上であればドレナージを検討する.
◆病態と診断
・大腸憩室は,大腸の平滑筋層を貫く直動静脈の部位で形成される.大腸内の内圧上昇に伴い,脆弱である血管貫通部位の粘膜側が壁外に向かって突出し,同部は筋層を含んでいない仮性憩室がほとんどである.
・大腸憩室は右側大腸に多く,年齢とともに左側大腸の割合が増加する.平均年齢52歳で大腸憩室保有率23.9%の報告がある.
・大腸憩室症において,大腸憩室出血と大腸憩室炎が主な治療対象となる.
・大腸憩室保有者の累積出血率は0.2%/年,2%/5年,10%/10年である.
・大腸憩室症の診断は,問診,身体所見,採血検査,画像診断(CTスキャン,大腸内視鏡)によって行われる.
◆治療方針
A大腸憩室出血
初期治療としては,内視鏡止血術,経過観察によって自然止血を待つ方法がある.大腸憩室出血が疑われた際,緊急大腸内視鏡施行についての十分なエビデンスはないが,造影CTで造影剤の血管外漏出がみられる,頻脈がある,貧血が顕著である場合などは緊急大腸内視鏡を検討する.
大腸内視鏡止血術を行う際には,ウォータージェット機能のついた内視鏡を準備し,憩室を正面視しやすいように内視鏡先端フードを装着する.大腸憩室出血の内視鏡的止血術はクリップ法が中心である