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GL腹膜播種診療ガイドライン2021年版
ニュートピックス
・従来の全身化学療法に加え,腹腔内化学療法や腹水ろ過濃縮再静注法(CART)の有用性を示すデータが報告されてきている.
治療のポイント
・原因となる癌種に効果が期待できる薬物療法が主となるが,緩和的対症療法を並行して行っていく必要がある.一般に,癌性腹膜炎の予後は非常に悪いため,患者の病状や希望に沿った形での治療方針の選択が重要である.
◆病態と診断
A病態
・腹膜播種は,胃癌などの消化器癌や卵巣癌などの癌細胞が腹腔内に散らばることによって,腹膜上に多数の転移巣を形成する病態である.
・腹膜播種が進行し,大量の腹水が貯留し,腹部膨満感,栄養失調,黄疸,るい痩などをきたし,performance status(PS)が著しく低下した状態が癌性腹膜炎である.
B診断
・初期の腹膜播種の症状は乏しく,腹痛,発熱,嘔気,嘔吐,体重減少,呼吸困難,腹水貯留などの症状が現れてから,CTスキャンやMRIなどの画像診断で腸閉塞,腹水や水腎症が存在することで癌性腹膜炎が疑われることが多い.
・確定診断には腹腔鏡検査や腹水細胞診が必要になる.
◆治療方針
A原発癌に対する治療
卵巣癌以外では減量手術のメリットはなく,薬物療法が主体となる.薬剤の選択は癌種によって異なるが,全身投与では薬物の到達性が悪いため腹膜播種に対する奏効性は低い.また,PSの低下や合併症の存在により,十分な薬物治療ができないケースも多い.近年,脂溶性で局所停留性の高いタキサンの腹腔内投与が腹膜播種に強い抗腫瘍効果をもたらすことが報告されている.軽度の腹膜播種に対して腹膜切除+温熱化学療法(HIPEC:hyperthermic intraperitoneal chemotherapy)も施行されるが,一般に侵襲度が高く,癌性腹膜炎を呈するような高度進行患者に対しての効果は限定的