診療支援
治療

急性肝炎
acute hepatitis
高見太郎
(山口大学大学院教授・消化器内科学)

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GLB型肝炎治療ガイドライン(第4版)(2022)

◆病態と診断

A病態

・急性肝炎は,主に肝炎ウイルスが原因で生じる急性のびまん性肝疾患である.

・本邦ではA,B,C,E型肝炎ウイルスが原因となることが多く,かつてはA型,B型が多かったが,近年はA型が減少しnonABCE型肝炎の割合が増加している.またA型肝炎は一過性地域性の流行を生じることがある.D型肝炎はB型肝炎に重複する形でしか発症しない.

・A,E型は経口感染であり,汚染された水,食物を介して感染する.B,C,D型は血液感染で,汚染血液が付着した針による刺入などで感染する.輸血については日本赤十字社により全例検査が行われており,感染リスクはごく軽微となっているが,感染直後の献血で感染成立する可能性は依然残っている.

・急性肝炎は肝炎ウイルスが肝細胞を破壊するために起こるのではなく,ウイルスに感染した肝細胞が免疫学的機序により破壊されることで生じている.

・肝炎ウイルスが体内に侵入してから症状が出現するまでの潜伏期は3~8週間であることが多いが,B,C型肝炎はより長期の潜伏期を有することがある.自覚症状を有さず,不顕性で経過する例も少なくないため,特にC型肝炎では自覚のないまま慢性肝炎を生じていることもある.

・原因ウイルスにより経過や重症化のリスクが異なる.A型,E型肝炎は一般的に一過性感染であり,B型肝炎も成人感染であれば一過性である場合がほとんどであるが,新生児,小児期に感染した場合や,近年本邦で増加している遺伝子型A(欧米型)では成人感染でも慢性肝炎に移行することがある.またB型肝炎は重症化リスクが高い.また免疫抑制・化学療法などによるB型肝炎再活性化(de novo B型肝炎)にも注意する.C型肝炎は感染時年齢にかかわらず慢性化を高率にきたす.

・広範な肝細胞の破壊が生じると合成能,代謝能低下の結果,急性

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