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治療

B型慢性肝炎,肝硬変:抗ウイルス療法
chronic hepatitis B,liver cirrhosis(antiviral therapy)
田中靖人
(熊本大学大学院教授・消化器内科学)

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GLB型肝炎治療ガイドライン(第4版)(2022)

治療のポイント

・HBVを完全に排除することはできない.現時点での治療目標は,HBs抗原の消失であり,肝炎の活動性と肝線維化進展の抑制による肝不全の回避と肝発癌の抑止である.

・治療選択においては,年齢,HBe抗原,HBV DNA量,線維化の程度とともに,挙児希望や仕事などの社会的背景も考慮する.

・ペグインターフェロンと核酸アナログ製剤はその特性が大きく異なるため,特徴をよく理解する必要がある.

◆病態と診断

A病態

・B型慢性肝炎は,B型肝炎ウイルス(HBV:hepatitis B virus)の持続感染により引き起こされる肝炎である.

・わが国におけるHBVキャリアの多くは母子感染であり,残りが乳幼児期での水平感染であると推測されている.また,近年では成人後感染での慢性化例(特にgenotype A)も報告されている.

・宿主の免疫応答とHBVの増殖状態により,無症候性キャリア(免疫寛容期),活動性肝炎(免疫応答期),非活動性キャリア(低増殖期)などの病期が存在し,肝炎の持続は,肝硬変への進展および肝発癌をきたすことがある.

B診断

・HBVの持続感染は,6か月以上HBs抗原陽性が持続することで診断される.病期や治療適応の決定には,トランスアミナーゼなどの肝機能検査,HBe抗原,HBe抗体,HBV DNA量を測定する.また,HBV genotypeは,その差異により臨床的差異が報告されており,予後や治療効果予測に有用である.

線維化評価は,血小板数や血清線維化マーカーの測定,画像診断とともに,必要に応じて肝生検や非侵襲的肝硬度測定法などを用いて総合的に行う.

◆治療方針

 HBVを完全に排除することは困難であり,治療目標は,肝炎の活動性と肝線維化進展の抑制による肝不全の回避ならびに肝細胞癌発症の抑止である.これを達成するための長

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