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GL慢性膵炎診療ガイドライン 2021 改訂第3版
治療のポイント
・治療方針決定のためには病期の判定が重要である.
・代償期では膵炎の急性増悪に対する治療,膵炎の再燃予防および疼痛コントロールが治療の中心となる.
・非代償期では,膵内外分泌機能不全による膵性糖尿病および消化吸収障害に対する治療が主体となる.
・膵石,仮性嚢胞,胆道狭窄などの合併症に対しては,まずは内視鏡的治療を行い,無効な場合には外科的治療を検討する.
・慢性膵炎は発癌のリスクが高いことを理解する.
◆病態と診断
A病態
・慢性膵炎とは,遺伝的や環境要因,その他の危険因子を有し,実質への傷害やストレスに対して持続的な病的反応を生じる個人に起きる,膵臓の病的線維化炎症症候群である.
・年単位で進行し,徐々に膵内外分泌機能の低下を伴う.
・アルコール性が最も多い(70%程度).
・臨床経過は潜在期,代償期,移行期,非代償期に分類される.
・代償期の主症状は腹部背部痛で,膵炎発作を繰り返す.移行期には線維化が徐々に進行し腹部背部痛は軽減する.非代償期には糖尿病や脂肪便,体重減少などの膵内外分泌不全症状が主体となり,血清膵酵素は低値を示す.
B診断
・慢性膵炎は,「慢性膵炎臨床診断基準2019」(図)に則り診断する.外分泌能の評価は治療法選択において重要である.症状や血清アルブミン値低下,コレステロール値低下などの検査所見からその存在は推定できる.
◆治療方針
飲酒喫煙などの生活習慣を改善させ,症状・病期に応じた栄養指導と投薬を中心とした内科的治療を行う.膵石,仮性嚢胞,胆道狭窄などの合併症がある場合にはインターベンション治療(内視鏡治療,体外衝撃波,外科手術など)を検討する.治療チャートを図に示した.
A病期別の基本的な治療方針
1.すべての病期における生活指導
1)断酒,禁煙.
2)香辛料やカフェインなどの制限.
2.潜在期~代償期
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