診療支援
治療

膵嚢胞,嚢胞性腫瘍
pancreatic cyst and cystic neoplasms
中村 聡
(九州大学大学院・臨床・腫瘍外科学)

頻度 情報なし

GLIPMN 国際診療ガイドライン(2017年版)

治療のポイント

・膵嚢胞性病変を評価する際,組織診断は困難なことが多く,画像診断によるところが大きい.

・画像診断で悪性の可能性が否定できない場合は,外科的切除の適応となる.

・術式は病変の局在により,主に膵頭十二指腸切除術,膵体尾部切除術,膵全摘術が選択されることが多い.

◆病態と診断

A病態

・膵嚢胞は,膵内に形成され,内部に膵液,粘液,血液,壊死物質などの液体成分を含む病変である.

・腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞に分けられ,腫瘍性嚢胞の場合は治療方針にもかかわるため鑑別診断が特に重要となる.

B診断

・仮性嚢胞などの非腫瘍性嚢胞の診断は,発生の原因検索のために,画像検査に加え膵炎を疑う所見などの病歴聴取も重要である.

・腫瘍性嚢胞は特異的な症状を有さず,他疾患に対する画像検査の際,偶発的に発見されることも少なくない.

・画像検査は造影CT,MRCP,超音波内視鏡検査が有用で,嚢胞壁や隔壁の肥厚壁在結節主膵管との交通の有無などから鑑別診断する.

◆治療方針

A仮性嚢胞

 急性膵炎や外傷性膵損傷などが原因で膵管が破綻し,膵液が漏出することで形成される非腫瘍性嚢胞である.自然退縮することも多いが,有症状や嚢胞感染を生じた場合はドレナージが必要となる.内視鏡的あるいは外科的治療が考慮される.

B膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN:intraductal papillary mucinous neoplasm)

 低度異型から浸潤癌まで幅広く,画像上悪性が疑われる際に外科的切除の適応となる.悪性の指標には,①IPMNによる閉塞性黄疸,②造影効果のある5mm以上の壁在結節,③10mm以上の主膵管拡張があり,いずれかを有するIPMNは切除が推奨される.それ以外の症例は,IPMN自体の悪性化や通常型膵癌の発症リスクに注意して経過観察する.

C粘液性嚢胞腫瘍(

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