診療支援
治療

肝疾患患者の生活指導
lifestyle intervention for patients with liver disease
西川浩樹
(大阪医科薬科大学主任教授・第2内科)

治療のポイント

・慢性肝炎では生活指導における制限は特にない.

・代償期肝硬変であっても,サルコペニア予防のための継続的な軽い運動は推奨される.

・非代償期肝硬変では,さまざまな合併症併発のリスクがあり,厳格な生活指導が必要である.

・肝疾患の病期全範囲にわたり,禁酒,十分な睡眠,食後の安静などは指導する必要がある.

A慢性肝炎患者の生活指導

 飲酒は病態進行の原因となり,肝発癌のリスクを高めるといわれており,禁酒が望ましい.食事についてはいわゆる「栄養バランスのよい食事」(農林水産省https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/)」であれば,特に制限を設ける必要はない.門脈血流維持のため,食後1~2時間は安静にし,入浴しないことを指導する.

 運動については,特に制限を設ける必要はないが,「心地よい疲れ」を感じる程度の運動量が望ましい.相対的運動強度にすると60%程度である(相対的運動強度50%が汗が出るか出ないかのレベル,70%が多量発汗の状態).適度な運動による筋肉量の維持が,近年注目を集めているサルコペニアの予防にもつながる.

 体重増加についても肝病態を進行させ,発癌を惹起する可能性があり,いわゆる「太りすぎ」には注意するように指導する必要がある.また,十分な睡眠を指示する.

 ウイルス性肝炎について,B型肝炎では日常生活で家庭内感染を起こすことは通常ないが,歯ブラシや剃刀などの出血の可能性のある生活備品を共有しないように指導する必要がある.C型肝炎についても同様である.

B代償性肝硬変患者の生活指導

 代償期肝硬変では,必要カロリーは25~35kcal/kg/日が適正とされる.塩分制限や蛋白制限は特に必要ないが,過剰摂取は避けるように指導する必要がある.また高蛋白食は高脂肪食になりがちなので,注意が必要である.

 運動に関しては,相対的運動強度が60%程

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?