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GLエビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2020
ニュートピックス
・「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」が2023年に改訂され,あらたに「腎臓専門医・専門医療機関の受診」について記載された.
治療のポイント
・常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD)治療は,すべての患者に行うべき対応,腎機能低下のハイリスク患者への対応,合併症への対応からなる.
・診療情報をふまえ,ハイリスク患者を特定したうえで,トルバプタン治療を行う.利尿関連有害事象や肝機能障害に留意する.
・末期腎不全に至っても,引き続きADPKD特有の症候や合併症への対応を要する.
◆病態と診断
A病態
・両腎に多発する嚢胞の増加・増大により腎機能が不可逆的に低下し,60歳までに約半数が末期腎不全にいたる最多の遺伝性腎疾患である.
・責任遺伝子は80%がPKD1,15%がPKD2とされ,PKD1のほうが約20年早く末期腎不全に至る.
・ADPKDは高血圧,脳動脈瘤,肝・膵嚢胞,心臓弁膜症,大腸憩室などを合併する全身疾患である.
B診断
・糸球体疾患ではないため検尿異常を欠き,代償機構により腎クリアランス機能は中年まで保たれるため,学校や職場の健診では,スクリーニング困難である.
・そのためADPKD診断基準では画像所見に重きがおかれる.遺伝子検査は診断基準に含まれない.
◆治療方針
すべてのADPKD患者に適切な血圧管理と塩分制限を行う.また脱水状態,肥満の回避が望ましい.腎機能低下のハイリスク患者には,トルバプタン治療を行う.
Aすべての患者への初期対応
1.血圧管理
GFR低下前から半数以上で高血圧を発症し,平均発症年齢は27歳である.ACE阻害薬もしくはARBの投与を中心に,130/80mmHg未満を目標に降圧する(50歳未満,eGFR>60mL/分/1.73m2 で忍容性があれば110/75mmHg未