頻度 よくみる(慢性腎臓病患者)
ニュートピックス
・血液透析患者の高P血症に対してより厳格な管理が冠動脈石灰化の進展抑制に有効であることが示された(J Am Soc Nephrol 32:723-735,2021).
治療のポイント
・腎機能低下が高P血症の最大の原因である.
・慢性腎臓病(CKD)患者の高P血症は,P吸着薬,P摂取制限を中心に行うが,副甲状腺ホルモン(PTH)の管理はP値の調整に有用である.
・低P血症はP摂取が不足する場合に生じることが多いが,過剰なP吸着薬の使用や透析療法など医原的要因がないか確認する.
◆病態と診断
高P血症と低P血症の原因と病態を図に示す.
A高P血症
・高P血症の主な原因は腎機能障害である.CKDではPの尿中排泄が低下する.それに対し線維芽細胞増殖因子23(FGF23)やPTHの作用によりP排泄が促進され,血清P濃度の上昇は軽度にとどまる.しかしCKDの進行に伴い,その代償機能が破綻し,高P血症が顕在化する.
・高P血症は二次性副甲状腺機能亢進症,血管石灰化あるいは生命予後に影響する.
・腎機能障害以外の原因として,腫瘍崩壊症候群や横紋筋融解症は細胞内,組織からPが放出されることにより,サルコイドーシスをはじめとする肉芽腫性疾患は過剰なビタミンDの作用により,そして,副甲状腺機能低下症,成長ホルモン過剰は尿中P排泄が減少することにより,高P血症をきたす.
B低P血症
・低P血症の多くは摂取不足,下痢などによる腸管でのP吸収低下によることが多い.飢餓から回復する際の急速な栄養補充はインスリン増加をきたし,低P血症が増悪する危険がある.
・原発性副甲状腺機能亢進症やFGF23の過剰産生は,尿中P排泄が亢進するため,高度な低P血症をきたす.
・低P血症はけいれん,意識障害などの神経症状のほか,横紋筋融解症,呼吸不全をきたしうる.また慢性的な低P血症は骨石灰化障害を