◆病態と診断
A病態
・血液中のHCO3- 濃度が上昇することによりpHが上昇した状態である.代償性の低換気によりPCO2 が上昇する.代謝性アルカローシスは酸(H+)の喪失かアルカリ(HCO3-)の増加によるが,Cl反応性の有無で細胞外液量(Cl)の減少を伴うものと伴わないものの2つに大きく分けられる(図).
・低K血症を併存する病態が多い.低K血症自体がアルカローシスを助長することから,低K血症も治療対象となる.
B診断
・代謝性アルカローシスの診断は血中の重炭酸イオン(HCO3-)濃度が上昇していることを示す.原則として直接測定(生化学による重炭酸塩)か血液ガス分析による採血が必要である.血液ガス分析を行う際,動脈採血と静脈採血では前者のほうがHCO3- 濃度が2mEq/L程度低下している点に留意すべきである.
・日本では慣習的に血液生化学検査で重炭酸塩を測定しないため,「Na-Cl」から酸塩基平衡の状態を予想する方法が知られている.すなわち「Na-Cl」が36以上ではHCO3- が上昇したと考えて代謝性アルカローシスが,36以下ではHCO3- が低下したと考えて代謝性アシドーシスが存在する可能性があると推測する.
・アルカローシスの場合,細胞外液量の評価は尿中NaでなくClで行われる.尿中Cl濃度が20mEq/L未満の場合,細胞外液減少,すなわちCl反応性があると判断する.
◆治療方針
代謝性アルカローシスは特に入院症例で高頻度であるが,積極的な補正を考慮する状況は限られている.代謝性アルカローシスによる体内への影響は心血管系(血管収縮促進,不整脈),電解質異常(低Ca血症,低K血症)がある.基本的に原因疾患の是正や原因薬剤の中止を行うが,細胞外液量に応じて以下のような治療がある.pHが7.6以上の重症代謝性アルカローシスで,心血管疾患を有する場合やテタニー・けいれん,不整脈などの