診療支援
治療

造血幹細胞移植(適応と方法)
hematopoietic stem cell transplantation(HSCT)
森 毅彦
(東京医科歯科大学教授・血液内科学)

A概要

 造血幹細胞移植は自家移植と同種移植に分けることができる().それぞれに骨髄・末梢血幹細胞移植,同種移植では臍帯血移植がある.同種移植ではドナーとして血縁者,非血縁者からの移植が選択可能である.自家移植は自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・凍結保存して用いる.同種移植では健常ドナーの造血幹細胞を採取して移植する.

 腫瘍細胞の根絶と拒絶反応を予防するために施行される.患者の免疫機能を高度に抑制するための移植前処置では,大量化学療法と,症例により全身放射線照射を併用する.前処置は通常の化学療法よりも強力な治療であり,原疾患の治癒の確率は高まるが,致命的な合併症が発生する危険性が高くなる.移植後早期は感染症,臓器障害,同種造血幹細胞移植では移植片対宿主病(GVHD:graft-versus-host disease)が移植関連死の原因となり,治療成績に大きく影響する.GVHDは患者の正常臓器を障害する免疫反応であるが,移植片対腫瘍効果という抗腫瘍免疫という側面も合わせもつ.この効果が同種移植の高い治癒率に寄与する.

B適応

 自家造血幹細胞移植は造血の回復が早いこともあり,患者の適応年齢上限は65~70歳である.同種造血幹細胞移植では上限65歳を目安とすることが多い.しかし,ともに暦年齢だけでなく,合併症・併存症を加味した判断をする.適応疾患は急性白血病,骨髄異形成症候群,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫,骨髄増殖性腫瘍などの造血器腫瘍に加えて,再生不良性貧血,先天性造血障害,免疫不全症がある.

 移植片対腫瘍効果がなく,採取する造血幹細胞への腫瘍細胞の混入の可能性を考慮する必要がある自家移植は,化学療法感受性のある再発・難治性の悪性リンパ腫,多発性骨髄腫,一部の急性白血病など限られた疾患が適応となる.

 同種移植は致死的合併症が多いため,適応となる疾患は化学療法や放射線療法による治癒が

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?