頻度 あまりみない
GL造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
ニュートピックス
・フィラデルフィア(Ph)染色体陽性例には分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)と抗体薬(再発・難治例に適応のあるブリナツモマブ)の併用で高い寛解率と無病生存率が報告され,化学療法の有害事象を回避できる可能性が示された.
・DNA合成を阻害するネララビンは再発・難治T細胞性ALLに使用されることが多かったが,初発のT細胞性ALLへの有効性が示された.
治療のポイント
・急性リンパ性白血病はPh染色体陽性(Ph+ALL)と陰性(Ph-ALL)に分けられる.
・Ph+ALLはチロシンキナーゼ阻害薬と化学療法の併用で治療する.Ph-ALLは分子標的薬が存在しないため化学療法を行う.
・小児ALLが成人ALLより予後がよいことが知られているため,成人Ph-ALLでも小児の化学療法に準じた治療を行うことが多い.
・Ph+ALLの寛解例には同種造血細胞移植を行うことが多いが,Ph-ALLは化学療法の進歩とともに同種造血細胞移植を行うことが減っている.
・治療中にPCRで白血病関連遺伝子が陽性の場合は微小残存病変陽性と判断し,治療の変更や同種造血細胞移植を考慮する.
◆病態と診断
A病態
・Ph染色体は9番と22番の染色体の相互転座により形成される染色体で,それにより形成される融合遺伝子BCR::ABL1のチロシンキナーゼ活性のために恒常的に下流にシグナルが伝達されてPh+ALLを発症する.
・Ph+ALLのほとんどはB細胞性のALLである.
・Ph-ALLの分子病態も解明されつつあるが,単独の遺伝子異常ではなくさまざまな分子病態が発症にかかわっていると考えられている.
B診断
・主訴は貧血症状,血小板減少やDICによる出血,感染症,腫瘍熱である.
・健康診断や他疾患の採血でみつかる無症状例もある.
・通常は血液検査で貧血,血小板減少,白血球増加