診療支援
治療

糖尿病合併妊娠,妊娠糖尿病
diabetes mellitus in pregnancy
和栗雅子
(大阪府立病院機構大阪母子医療センター・母性内科 主任部長)

頻度 よくみる(妊婦の妊娠糖尿病)

GL糖尿病診療ガイドライン2019

GL産婦人科診療ガイドライン―産科編2023

ニュートピックス

・妊娠糖尿病既往女性のフォローアップに関する診療ガイドラインが公布予定である.

治療のポイント

・母児合併症予防のため,妊娠前から厳格な血糖管理が必要である.

・糖尿病女性の妊娠前発見,妊娠糖尿病の早期発見,産後フォローアップも重要である.

・インスリン必要量は妊娠初期は減量,中期以降は漸増し,分娩後には元に戻ることが多い.

◆病態と診断

A病態

1.妊娠による影響

・妊娠中は,胎盤から産生されるインスリン拮抗ホルモンやアディポサイトカインなどの影響により,インスリン抵抗性が増大する.

・インスリン抵抗性を代償するため膵β細胞が肥大・過形成し,インスリン分泌促進・高インスリン血症状態となる.また,胎児の成長に伴いブドウ糖消費の増大もみられ,空腹時血糖は低下する.

・インスリン抵抗性が勝ると妊娠糖尿病発症,糖尿病悪化を引き起こす.

2.糖代謝異常による影響

・妊娠前~妊娠初期の母体高血糖により,先天異常の発生頻度が高くなる.

・妊娠中に母体の高血糖が続けば,母体には流産・早産,妊娠高血圧症候群,羊水過多症,尿路感染症,糖尿病網膜症・腎症の増悪,ケトアシドーシス,胎児には過剰発育児・巨大児,胎児仮死,新生児には低血糖症,黄疸,呼吸障害,心筋肥大など種々の周産期合併症が生じやすくなる.

B定義と診断基準

1.妊娠糖尿病

・妊娠中に初めて発見または発症した,糖尿病に至っていない糖代謝異常.

・75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において以下の基準の1点以上を満たした場合;①空腹時血糖値(FPG:fasting plasma glucose)≧92mg/dL,②1時間値≧180mg/dL,③2時間値≧153mg/dL.

2.妊娠中の明らかな糖尿病

・妊娠中に初めて発見または発症し,以下のいずれ

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