頻度 よくみる
ニュートピックス
・妊婦での,TSH>2.5IU/Lが流産リスクと関連していることが知られるようになり,積極的な甲状腺ホルモン投与が推奨されている.
治療のポイント
・LT4 製剤を少量開始しFT4 値とTSH値をモニターしつつ漸増し用量調節する.
◆病態と診断
A病態
・甲状腺ホルモンの分泌~作用不全による疾患で,甲状腺原発性と中枢(続発)性に分類できる.多くが原発性,なかでも慢性甲状腺炎(橋本病)が多く,医原性(放射線・手術・薬剤性)が次ぐ.
・むくみ・耐寒能低下・徐脈・便秘・傾眠・肌荒れ・CK上昇・コレステロール上昇などが典型で,続発性では下垂体欠落症状が加わる.
・粘液水腫性昏睡は,重症機能低下例が寒冷曝露を契機とした低体温・高CO2・低Na血症などから昏睡に至る内分泌緊急症である.低頻度だが早期発見と的確な治療が求められる.
・慢性甲状腺炎は機能低下症と同義にとらえられがちだが,生涯にわたり機能正常な例,破壊性(無痛性)甲状腺炎を起こす例,ヨード過剰で一過性機能低下をきたす例など多彩である.
・なおホルモン低値を示しながら機能低下ではないNTI(non-thyroidal illness)(低T3 症候群とも呼称される)は,他の慢性炎症~消耗性疾患や飢餓などが原因で,ホルモン補充は不要とされる.
B診断
・機能低下症の診断には甲状腺刺激ホルモン(TSH)と遊離T4(FT4)の同時測定が必須である.両者とも正常値ではじめて正常といえるが,FT4 が低値でTSHが上昇していれば原発性機能低下症で(TSH上昇のみは「潜在性」),原因検索に進む.
・硬いびまん性甲状腺腫は慢性甲状腺炎の典型で,自己抗体(TPOAb・TgAb)のいずれかの陽性をもって臨床的に診断確定とする.萎縮していれば,特発性粘液水腫か放射線治療後を考える.前者では甲状腺刺激阻止型抗体(TSBAb)の存在が参考になる