診療支援
治療

急性乳腺炎,乳輪下膿瘍
acute mastitis,subareolar abscess
徳田 裕
(聖隷福祉事業団聖隷横浜病院・乳腺センター長)

頻度 情報なし

Ⅰ.急性乳腺炎

治療のポイント

・産褥期および授乳期に発症することが多い.

・乳汁の排出が不完全なため,うっ滞が起こり,非細菌性のうっ滞性乳腺炎となる.

・疼痛を緩和し授乳を維持することが基本.

・うっ滞が12~24時間を超え,乳頭を通して感染が起こると急性(化膿性)乳腺炎になる.

・リスクファクターは,既往や乳頭のひび割れ.

・膿のドレナージと抗菌薬投与が必要.

◆病態と診断

・乳房全体あるいは一部の疼痛発赤,腫脹,発熱や有痛性腋窩リンパ節の腫脹がみられることもある.

・非典型例では炎症性乳癌を否定しておくことも必要である.

◆治療方針

 治療の第一は,乳汁のうっ滞を除去することである.局所的には冷湿布を使用し,授乳を積極的に行い,授乳後は,射乳や搾乳を指導することが重要である.

 化膿性乳腺炎への移行や膿瘍形成が疑われるときには,抗菌薬を投与する.最多の起因菌は黄色ブドウ球菌であり,MRSAにも注意する.膿瘍形成の診断,ミルクや膿培養による起因菌の同定,排膿には超音波ガイド下穿刺が有用である.

 原則として,鎮痛薬や抗菌薬は授乳を妨げないものを選択する(国立成育医療研究センター「授乳と薬について知りたい方へ」).授乳不可の場合には,乳汁分泌抑制薬を用いる.

Px処方例 下記1)~3)を適宜用いる.

1)アセトアミノフェン(カロナール)錠(300mg) 1回1~2錠 4~6時間ごと 疼痛・発熱時 頓用

2)セフカペン(フロモックス)錠(100mg) 1回1錠 1日3回 10~14日間

 膿瘍切開・排膿術後などで授乳不能で,本人も強く希望する場合,3)を用いる.

3)カベルゴリン(カバサール)錠(1mg) 1回1錠 1日1回 食直後

Ⅱ.乳輪下膿瘍

◆病態と診断

・若年者から中高年まで幅広い年齢層の女性,まれに男性にも発症する.

・喫煙がリスク因子.

・主乳管上皮の扁平上皮化生により生じたケラチン塞

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