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治療

大型血管炎(高安動脈炎・巨細胞性動脈炎)
large vessel vasculitis〔Takayasu arteritis(TAK),giant cell arteritis(GCA)〕
中岡良和
(国立循環器病研究センター・血管生理学部部長(大阪))

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GL血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)

治療のポイント

・内科的治療の第1選択はステロイドである.ステロイド減量過程で半数以上に再燃がみられ,緩徐に減量する必要がある.

・ステロイド治療抵抗性を示す症例には,生物学的製剤のトシリズマブ皮下注または免疫抑制薬のメトトレキサートやアザチオプリンなどを用いる.

・血管リモデリングに伴う合併症(大動脈弁閉鎖不全,大動脈瘤,腎血管性高血圧,虚血性心疾患,肺高血圧症,視力障害など)を予防するため,炎症のコントロールが重要となる.

◆病態と診断

A病態

・大型血管炎は高安動脈炎(TAK)と巨細胞性動脈炎(GCA)の2疾患から構成される.

・大型血管炎はいまだ原因不明で,大型・中型の動脈に巨細胞を伴う肉芽腫を形成する自己免疫性血管炎である.

・厚労省政策班の調査で日本の患者数は,TAKが5,000名程度,GCAが3,000名程度とされる.

・TAKは若年女性に好発し,大動脈とその主要分枝血管,肺動脈,冠動脈,腎動脈に炎症を生じて,主な徴候は全身の炎症と血管炎による疼痛,血管の狭窄・閉塞・拡張で,脳,心臓,腎臓などの臓器障害と動脈瘤が問題になる.

・GCAは50歳以上の高齢者に発症し,外頸動脈領域で高頻度に病変がみられるために「側頭動脈炎」と以前はよばれていたが,最近の報告では大動脈病変も多いとされる.GCAの約4割にリウマチ性多発筋痛症が合併する.

B診断

・TAKの診断は症状と画像検査から総合的に行い,血液検査上の炎症所見は必須ではない.TAKの初発症状は発熱,倦怠感,頭痛,頸部痛,上肢のしびれなどの非特異的なものが多い.

・GCAの診断は米国リウマチ学会の1990年の分類基準が今も使用されて厚生労働省認定基準にも用いられているが,現在改訂中である.

・大型血管炎の診断の鍵は画像検査で,造影MRI,造影CTおよび頸動脈エコーなどで大動

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