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ニュートピックス
・ビタミンK拮抗薬とアスピリンの間で臨床的アウトカム(虚血性脳卒中,主要な頭蓋外および頭蓋内出血,死亡)とMRIアウトカム(新たな虚血性または出血性病変)の複合アウトカムを比較したTREAT-CAD試験において,アスピリン群はビタミンK拮抗薬群に対して非劣性を証明できなかった.
治療のポイント
・脳動脈解離が頭蓋内か頭蓋外かによって治療方針が異なる.
・虚血発症の頭蓋外動脈解離では,急性期に抗血栓療法を行うが,抗凝固療法と抗血小板療法のいずれの選択も妥当とされている.
・虚血発症の頭蓋内動脈解離でも抗血栓療法を考慮してもよいが,解離部に瘤形成が明らかな場合はくも膜下出血のリスクがあり,抗血栓療法は行うべきではない.
・抗血栓療法は3~6か月の継続を目安とするが,3か月ごとに解離部の画像検査を行い,瘤形成などの経時変化がないか確認する.
◆病態と診断
A病態
・脳動脈解離は,脳動脈壁内の出血により壁が裂けた状態であり,突然の激しい頭痛・頸部痛で発症することが多い(約50~80%).
・頭蓋外では虚血症状(一過性脳虚血発作あるいは脳梗塞)を,頭蓋内では虚血症状か出血症状(くも膜下出血)をきたす.
・解離血管による圧迫により,下位脳神経麻痺やホルネル徴候を示すことがある.
・外傷性,医原性,特発性の3種の成因のうち,特発性が最も多く,頸部回旋や過伸展・圧迫などの軽微な外傷が誘因となることが多い.
・わが国では頭蓋内椎骨動脈が多くみられ,頭蓋外内頸動脈に多い欧米とは対照的である.
B診断
・痛みの性状のみで本症を診断することは困難であり,まずは頭部単純CTやMRIで,脳梗塞やくも膜下出血などの所見がないかをスクリーニングする.
・脳動脈解離を疑う部位に応じて,頸部血管エコー,CT/MRアンギオグラフィ,脳血管撮影などにより,壁内血腫を同定すると同時に,内膜の断裂,順行性血流,偽