診療支援
治療

進行性核上性麻痺
progressive supranuclear palsy(PSP)
矢部一郎
(北海道大学大学院教授・神経内科学)

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GL進行性核上性麻痺(PSP)診療ガイドライン2020

治療のポイント

・根本的治療法として確立したものはなく,対症療法が主となる.

・リハビリテーションの励行は筋力維持および廃用症候群予防の観点から推奨される.

・指定難病制度,介護保険制度(パーキンソン病関連疾患として特定疾病に該当するため,2号被保険者として40歳以上で利用可能),身体障害者制度など,適切な社会保障制度を利用することが望ましい.

◆病態と診断

A病態

・淡蒼球,視床下核,脳幹被蓋,小脳歯状核,前頭葉などの部位を中心に,広範に神経細胞やグリア細胞にリン酸化した4リピートタウが蓄積する神経変性疾患である.

・特にグリア細胞のうちアストロサイトにタウ蛋白が蓄積すると,tufted astrocyteと呼称される本症に特徴的な病理所見を生じる.

B診断

・典型例では,垂直性核上性注視麻痺姿勢保持障害を主たる症状としたRichardson型といわれる病型を呈する.そのほかに運動緩慢認知機能障害も主要徴候であり,これら4つの徴候に注意して診断することになる.しかしながら,臨床病型は多彩であり,診断が困難な場合も多い.パーキンソン病などの他の疾患を確実に除外することが大切である.

・頭部MRI矢状断で“ハチドリ徴候”といわれる中脳被蓋の萎縮や,ドパミントランスポーターSPECTで線条体の集積低下を認めることや,パーキンソン病で認められるMIBG心筋シンチグラフィの集積低下を認めないことなども診断を行ううえで参考になる.

◆治療方針

A薬物治療

 根本的治療法として確立したものはない.その効果は限定的ではあるが,パーキンソン病治療薬であるL-ドパ製剤を投与する場合が多い.このことは本剤が有効であるパーキンソン病との鑑別をするうえでも大切である.

Px処方例

 レボドパ・ベンセラジド(マドパー)配合錠またはレボドパ・カルビドパ(

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