診療支援
治療

本態性振戦
essential tremor
武田 篤
(国立病院機構仙台西多賀病院・院長)

頻度 よくみる

◆病態と診断

A病態

姿勢時運動時に出現し,安静時に消失する4~12Hz程度の震えを呈する.上肢のほか,頭部や下肢にもみられる.喉頭に出現すると声が震える.精神的緊張により増悪し飲酒により軽減する.

・病態機序には不明の点が多いが,小脳-視床-大脳皮質の機能障害が背景にあると推定されている.しばしば遺伝歴を示す場合がある(家族性振戦)が類似の症候を示し治療方針も同様である.

B診断

・上記の特徴から疑い鑑別を進める.パーキンソン病の場合は静止時に増強する4~8Hzのやや遅い振戦が特徴である.二次性振戦の可能性を念頭に甲状腺機能亢進症の有無をチェックする.

・バルプロ酸やβ刺激薬などのほか,抗不整脈薬や降圧薬など頻用される薬剤により誘発される場合も多いので,服薬歴を慎重に調べる必要がある.

◆治療方針

A薬物治療

Px処方例 下記の薬剤を症状に応じて適宜用いる.

1)アロチノロール錠 1日5~20mgを1~2回に分服

2)プロプラノロール錠 1日10~60mgを1~3回に分服保外

3)プリミドン細粒 1日25~250mg(成分量として)を1~2回に分服保外

4)ゾニサミド散 1日50~200mg(成分量として)を1~2回に分服保外

5)クロナゼパム(ランドセンまたはリボトリール)錠 1日0.5~2mgを1~2回に分服保外

Px使い分けポイント

・いずれも少量から漸増する.保険適用となっているのは1)のみである.1)2)のβ遮断薬については徐脈や血圧低下に注意する.3)~5)についてはてんかんに用いる場合より少量で有効性を示すことが多い.5)は抗不安作用もあるため,緊張感を和らげることによる間接的な効果も期待できる.

・海外のガイドラインではガバペンチンやトピラマートも推奨されているが,いずれも本邦では保険適用外である.

B外科治療

 薬物治療で効果不十分な場合の選択肢となる.視床Vi

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?