診療支援
治療

認知行動療法
cognitive-behavioral therapy(CBT)
中尾智博
(九州大学大学院教授・精神病態医学)

ニュートピックス

・新型コロナウイルス感染症の流行下において,うつ,不安,不眠といったさまざまなメンタルヘルスの不調が報告されている.

・その対策として認知行動療法(CBT)の技法を応用した応急的処置介入方法(サイコロジカルファーストエイド)が開発されており,オンラインやデジタルにも応用されている.

ACBTの概略

 人は,強いストレス下や精神疾患に罹患した状態では,事態を冷静に把握し適切に行動することが通常のようには行えなくなる.そこに「認知の歪み」とよばれる物事のとらえ方の偏りも加わり,非適応的な行動や抑うつ気分・不安などの不快な気分が引き起こされる.

 CBTは精神療法の1つであり,患者と治療者が対話を行いながらこのような問題に関係する思考や行動,感情を分析し,介入の工夫によって問題を解決していく治療法である.CBTではさまざまな技法を用いながら気分や行動の変化を促し,患者自身の問題への対処能力を強化し,それによって精神症状の改善やストレス対処能力の向上を目指す.多くの精神疾患に適用可能であり,特にうつ病や強迫症,不安症,心的外傷後ストレス症(PTSD),摂食症,適応反応症などに対して有効性を発揮する.CBTは解決志向型の短期精神療法であり,原則として週1回,1回30~50分,計10~16回を目安に治療が行われる.

BCBTの治療構造

 治療は,①治療の導入,②問題への取り組み,③終結と再発予防,の3つのパートに大別される.

 ①治療の導入ではまず問題点や長所などの情報を収集し,症例のみたてを行い,治療方針を立てる.さらに自分のおかれている状況や気分,行動,そしてどのようなことを考えているのか(認知)についてモニタリングを行う.

 ②問題への取り組みでは物事のとらえ方に偏りがないか,あるいは非適応的な行動に至っていないかを検証し,認知の修正や行動を変化させるアプローチ(後述)を組み合わ

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