診療支援
治療

森田療法
Morita therapy
黒木俊秀
(九州大学大学院教授・臨床心理学)

GL外来森田療法のガイドライン(2009)

ニュートピックス

・今日の森田療法は外来治療が主流であり,その適応も不安症(神経症)圏以外の病態へと拡大しており,国内外で効果の検証が進められている.

治療のポイント

・森田療法は,1920年頃,わが国で創始された独創的な入院精神療法であるが,現代では外来通院治療が主流である.

・外来森田療法の適応は,不安症やうつ病,心身症,適応反応症,心的外傷後ストレス症,物質関連症など,さまざまな病態へと広がっている.

・治療のポイントを明示したガイドラインに基づき,病態や治療環境に応じて実際の治療の手順には多くのバリエーションがある.薬物療法を併用することもある.

A主な特徴

 森田療法の理論と技法には,認知行動療法と類似した点もあるが,①過去や原因を探らず,現在をいかに行動するかを重視する,②人間の苦悩を「生の欲望」と「死の恐怖」の両側面から理解する,③人間の感情も自然の一部と認識して,それを受容するなどの特徴がある.

B治療方針

 外来森田療法では,治療の導入時に,森田療法理論に基づく症状の理解,とらわれ(悪循環)の機制の提示,および「あるがまま」の態度の説明(心理教育)を行い,治療目標を設定する.しばしば日記による助言が行われる.

 ガイドラインでは,次の5つが治療の要点である.

1.感情の自覚と受容を促す

 不快や恐れの感情を避けることなく,それを自覚させ,「感情はこれをそのままに放任すれば,時を経るに従って自然に消失する」という「感情の法則」を指導する.

2.生の欲望を発見し賦活する

 不安や恐怖の裏にある健康な欲望を指摘し,主訴に対する患者のネガティブな認識を変換する.

3.悪循環を明確にする

 症状発展の機制として,精神交互作用(症状に対する注意と感覚が悪循環的に作用し,自覚症が強化されること)と思想の矛盾(「かくあるべき」「かくあってはならない」という構えが

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