◆病態と診断

A病態

・器質性精神疾患とは，脳そのものの器質性病変によって精神症状や行動症が引き起こされる病態を指し，器質因としては，脳血管障害，外傷性脳損傷，脳炎，脳腫瘍が多い．

・急性期には意識障害を背景とした多彩な精神症状が出現し，せん妄と一部病態が重なる．

・慢性期には衝動性・攻撃性・興奮などの情動・行動コントロールの障害や抑うつ・不安・アパシーなどの精神症状を認め，前頭葉，辺縁系，視床・基底核，大脳右半球の病変で生じやすい．

・記憶・注意・遂行機能などの認知機能の障害を伴うケースが多く，これらの高次脳機能障害はしばしば社会復帰の妨げとなる．

B診断

・精神症状が脳損傷後に出現すること，CTやMRIにより精神症状を説明し得る脳部位に器質性病変が確認されることが診断には必須である．

◆治療方針

　急性期と慢性期では治療方針が異なり，急性期は精神状態の安定を，慢性期は社会復帰を目標とする．

A急性期

　精神症状の原因となる器質因の治療が主軸となる．しかし器質因の治癒そのものが困難なケースも多く，その場合は薬剤による対症療法を行う．薬物治療はせん妄治療に準拠し，興奮や攻撃性が活発なケースでは錐体外路症状の生じにくい非定型抗精神病薬を選択する．夜間に精神症状が活発な場合はクエチアピンを，日中も精神症状が目立つ場合はその他の非定型抗精神病薬を選択する．

Px処方例　下記のいずれかを用いる．

1）クエチアピン（セロクエル薬）錠　1回25～100mg　1日1回　夕食後もしくは