診療支援
治療

アルコール依存症
alcohol dependence syndrome
宮田久嗣
(東京慈恵会医科大学客員教授・精神医学)

頻度 よくみる

GL新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン(2018)

治療のポイント

・治療の第1選択は断酒であるが,患者が断酒に応じない場合に治療脱落を防ぐために減酒を用いる.

・離脱症状の治療は,ベンゾジアゼピン系薬物,輸液,ビタミンB1 投与である.

◆病態と診断

A病態

・アルコールによる依存と精神,身体障害.

B診断

・強い飲酒欲求のために飲酒を制御できず,健康や社会生活に障害が生じている.耐性や離脱症状がある.

◆治療方針

A飲酒の制御障害の治療

1.断酒治療

a.適応

 治療の第1選択であるが,特に,飲酒欲求,精神・身体合併症,離脱症状,家族・社会問題が重度の場合.

b.薬物療法

1アカンプロサート

Px処方例 嫌酒薬と併用可能.

 アカンプロサート(レグテクト)錠(333mg) 1回2錠 1日3回

注意 副作用は,下痢(18.6%),傾眠,嘔吐(各1.0%).

2嫌酒薬 アルコールの代謝を阻害してアセトアルデヒドを蓄積させ,動悸,頭痛,嘔気などの不快反応を起こす.不快反応のために飲酒を控える.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)ジスルフィラム(ノックビン)原末 1日100~500mg(成分量として)を1~3回に分服

2)シアナミド(シアナマイド)内用液 断酒療法の場合:1日50~200mg(成分量として)を1~2回に分服,節酒療法の場合:1回15~60mg 1日1回

不適切処方 1)は重篤な肝障害,腎障害,呼吸器疾患,心疾患では禁忌.

注意 2)は肝細胞にすりガラス様封入体を形成するため嫌酒薬の第1選択はジスルフィラムとし,使用は短期間にとどめる.

2.減酒治療

a.適応

1)軽症例の重症化防止.

2)重症例でも,患者が断酒に応じない場合に治療脱落を防ぐために用いる.

b.薬物療法

Px処方例

 ナルメフェン(セリンクロ)錠 1回10mg 飲酒の1~2時間前.20mgまで増量可能

注意 

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