ニュートピックス
・現在一般的に使用される抗精神病薬は第2世代,あるいは非定型抗精神病薬とよばれ,気分安定作用を有する薬剤が多い.そのため精神症症状を呈し,行動化が認められた患者は病名を問わず少量から投与されることが多い.
治療のポイント
・まず器質因子(脳炎や脳腫瘍など頭蓋内病変や全身性エリテマトーデス,甲状腺機能亢進・低下など),あるいは物質誘発性(各種覚醒剤やステロイドなど)を否定する.
・妄想や幻覚が主たる症状の場合,頭ごなしに否定することはせずに医師-患者間の信頼関係構築に努める.苦労している家族をねぎらうと同時に専門医への紹介はためらわずに行う必要がある.時に強制的な入院が必要なこともある.
◆病態と診断
・前述の統合失調症の類縁の疾患で,統合失調症に比して以下にまとめられる特徴を有する疾患群である.
1)決められた日数に満たない:急性一過性精神病;1日以上1か月未満,統合失調様症;1か月以上6か月未満
2)別の病態が加わる:統合失調感情症;躁やうつといった気分症状が随伴する,統合失調症型パーソナリティ症;社会的および対人関係的な欠陥を伴う
3)一部の症状が極端に強い:妄想症;妄想症状が強く幻聴などは(ほとんど)ない,カタトニア;顕著な運動性低下(無反応)から過剰な興奮といった幅のある精神運動性障害.高熱や意識障害を合併するため全身管理を要することも多い.
・なお病態として判明しているものは少ないものの,卵巣奇形腫に随伴することの多い抗NMDA受容体脳炎といった自己免疫性の辺縁系脳炎が,一部の急性一過性精神病に類似した経過を示すことが知られている(Lancet Neurol 7:1091-1098,2008).
◆治療方針
妄想や幻覚が主たる症状で,器質因子が否定された場合には抗精神病薬の投与を開始することが多い.投薬により病識が得られるようになり,「振り返ってみるとあのときは自分で