頻度 情報なし(一般人口調査では70万人だが,カルテ調査では2万6千人)
治療のポイント
・症状の軽減後も,社会復帰のための支援が必要である.
・性暴力,虐待などの被害についてはスティグマからの保護も必要である.
◆病態と診断
A病態
・予期しない生命の危険を生じる体験(トラウマ)に直面したあとで,その記憶が意図に反して想起され,再び同じ体験をしていると知覚される.そのために何度も被害を繰り返しているかのような強い不安が持続し,防衛反応として現実感の麻痺が生じる.
・多くの場合は半年以内に自然軽快するが,被害が深刻であったり,2次被害が生じた場合などに慢性化する.
B診断
・トラウマ体験の確認(死,重傷,性被害,虐待の実体験あるいは脅威に直面したこと).
・その体験が意図にかかわらず想起され(悪夢を含む),その際に強い恐怖や動悸,呼吸困難,筋緊張などの身体反応を生じる.また常に危険に直面しているかのような不安があり,些細な物音に驚愕する.現実感がなくなったり,喜怒哀楽の感情がわかなくなる.
・これらの状態が被害後,1か月以上継続した場合にPTSDと診断される.
C鑑別診断
・不安を悪化させる物質の使用(カフェイン,アルコールなど),薬剤の影響(抗うつ薬によるアクティベート,抗精神病薬によるアカシジアなど),身体疾患(心疾患,貧血,甲状腺機能異常など).
◆治療方針
A心理教育
日本でのトラウマ体験の生涯有病率が60%であること,上記の症状が異常な体験についての通常の反応であることを説明する.また,呼吸法,リラクゼーションによる不安軽減法を指導する.
B薬物療法
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)セルトラリン(ジェイゾロフト薬)錠(25・50mg) 1回1錠 1日1回 夕食後(1日最大100mg)
2)パロキセチン(パキシル薬)錠(10・20mg) 1回1錠 1日1回 夕食後(1日最大40mg)
!不適切処