診療支援
治療

解離(変換)症
dissociative [conversion] disorders
野間俊一
(のまこころクリニック・院長(京都))

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治療のポイント

・解離(変換)症状があれば,はじめにてんかんなどの神経疾患を鑑別する.

・患者が安心できる治療関係を構築し,安全感を得られる環境を確保する.

・治療の中心は精神療法である.支持的精神療法を基本とし,トラウマ記憶は慎重に扱う.

・抗うつ薬を中心とした薬物療法を併用する.

◆病態と診断

A病態

・同一性,感覚,感情,思考,身体運動の連続性が障害される疾患である.

・意識変容を伴う病態であり,すべてをまとめて「解離」とよぶこともあれば,精神症状を「解離」,身体症状を「変換」とよぶこともある.

・解離の成因は,現在危険や苦痛を感じる,過去の苦痛な体験を頻繁に想起するなど,安全な生活が脅かされていると感じることと関連しており,しばしば外傷体験の既往がある.

B診断

・解離性同一性症では,複数のパーソナリティ状態の交替が認められる.

・解離性健忘には記憶欠損があり,物質の影響や神経疾患が除外されている.

・離人感・現実感消失症では,自分自身や周囲の世界について現実感を欠いている.

・変換症では,神経疾患では説明できない運動や感覚の異常が認められる.

◆治療方針

 解離(変換)症治療の最終目的は,「今を自分自身が生きているという現実感を回復」することによる解離症状の消退である.そのためには,①現在の生活環境での安全感の獲得,および,②(外傷既往のある場合)トラウマ記憶の処理を目指し,必要に応じて,③薬物療法を併用する.解離症状の完全な消退よりも,安定した生活を送ることを現実的な目標とする.

A精神療法

 患者が安心できる支持的精神療法がベースとなる.患者が安全感を得られない生活環境があるなら,その改善を試みる.そののち,外傷既往があれば,患者のペースで慎重にトラウマ記憶を話題にする.

B薬物療法

 抗うつ薬が第1選択となる.

Px処方例 下記1),2)のいずれかを用いる.

1)パロキセチン(パキシル

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