診療支援
治療

過眠症(ナルコレプシーを含む)
hypersomnia disorders(including narcolepsy)
栗山健一
(国立精神・神経医療研究センター・精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部部長(東京))

治療のポイント

・過眠症治療のポイントは,生理的に必要とされる睡眠時間より睡眠機会が過少であることにより生じる睡眠不足が原因か,中枢神経系の障害により生じる過眠であるかを適切に鑑別することである.

・中枢神経刺激薬による治療は,診断が確定し,流通管理上許可された疾患にのみ,必要最小量で行う.

Ⅰ.ナルコレプシー

頻度 ときどきみる

◆病態と診断

日中の耐え難い眠気と,突然眠り込む睡眠発作に加え,典型的には情動脱力発作(カタプレキシー:怒り,笑いなどの感情の昂りに伴い四肢・体幹の筋力が脱力する),入・出眠時幻覚,睡眠麻痺(金縛り)などのレム関連症状を伴う【ナルコレプシー・タイプ1】.

・情動脱力発作を伴わない亜型が典型例の4~5倍多く存在する【ナルコレプシー・タイプ2】.

・終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG:polysomnography)で,他の過眠の原因となる睡眠障害および睡眠不足が除外されたうえで,反復睡眠潜時検査(MSLT:multiple sleep latency test)で平均睡眠潜時が8分以下かつ入眠時レム睡眠期(SOREMP:sleep onset REM period)が2回以上出現することで診断される.

・覚醒維持にかかわるオレキシン産生神経細胞の変性・脱落が原因と考えられており,髄液中オレキシンA濃度が110pg/mL以下であることが【ナルコレプシー・タイプ1】の診断支持所見となる.

・原則として夜間の睡眠時間は標準的であり,むしろ夜間睡眠が短縮・分断化する傾向がある.

・典型的には5歳以降,10~25歳に発症のピークがあるが,まれに40歳以降に発症する場合もある.

◆治療方針

 現在のところ根治療法が存在しないため,日中の眠気・睡眠発作および,レム関連症状に対して対症的に薬物療法を行う.

A日中の耐え難い眠気

Px処方例 まず,1)から行う.無効時もしくは副作用のために増量が難

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