治療のポイント
・抗精神病薬による副作用は多彩であり,使用中に不調の訴えがあれば副作用を疑う.
・悪性症候群やQT延長,多飲水など生命予後に直結する副作用もある.
・基本対応は減量・中止・変薬だが,そうした対応が難しい場合や応急処置的な場面では副作用を緩和する薬剤を追加投与する.
・緊急時以外,抗精神病薬の調整は専門医にコンサルトする.
・D2 受容体遮断を作用機序とする制吐薬(プロクロルペラジン,メトクロプラミドなど)も同様の副作用が生じうる.
◆病態と診断
・錐体外路症状:診断にあたり視診や行動の観察および同居者よりの情報が重要である.
1)パーキンソン症状:入室時の歩行と姿勢,手指振戦は気づきやすい.
2)アカシジア:患者自身が下肢のムズムズした不快感を訴え足踏みなどを行う.焦燥感・不安と誤認される場合もある.
3)ジストニア:突然生じる筋緊張の異常な亢進(捻転やつっぱり,痙縮,異常な位置に固定される).投与初期,慢性期とも生じる.
4)ジスキネジア:口部,舌の顔面,上下肢や体幹における亢進した運動.主に投与慢性期に生じる.
・悪性症候群:抗精神病薬使用に伴う重篤な筋強剛と体温上昇(38℃),発汗,意識障害.非典型例も多い.焦燥,消耗,脱水,鉄欠乏は危険性を高める(同一用量の抗精神病薬を継続していてもこうした条件で悪性症候群が生じうる).
・循環器系症状:QT延長や頻脈,徐脈など多彩な症状が報告されている.自覚症状の評価,定期的(1年ごと程度)な心電図測定が望ましい.
・多飲水:意識障害やけいれんが生じた場合に疑う.症状は低Na血症による.
・代謝系副作用:体重増加が簡便な指標である.
・高プロラクチン血症:乳汁分泌,月経不順など.
・便秘:訴えを指標にするが,排便へのこだわりが強くなっている場合もある.
・性機能障害:主観を得る必要がある.
◆治療方針
抗精神病薬の副作用が生じていると考えられた場合,内