診療支援
治療

抗うつ薬の副作用
adverse effects of antidepressants
鈴木健文
(山梨大学教授・精神神経医学)

A概要

 すべての抗うつ薬治療は通常何らかの副作用を伴い,治療効果判定の際には有効性・忍容性バランスの評価は必須である.また臨床試験においては,非実薬(プラセボ)によるノセボ効果も高率に認めることに留意したい.

 そうしたなか,抗うつ薬による副作用の評価においては,頻度と重症度が問題になる.すなわち高頻度ながらある程度のcopingが可能なもの,頻度こそまれでも医学的注意が欠かせないものがある.

 また副作用によっては,時間経過とともにtolerableとなることもあるため,服薬指導は欠かせない.各薬剤プロフィール,関与が想定される神経伝達物質から副作用の予測はある程度は可能であるが,個人差は相当大きいことに留意する.また同類とみなされることも多いと推察される,便宜的グループ内の各薬剤特性は,大なり小なり異なることには注意が必要である〔いわゆるSSRI(selective serotonin reuptake inhibitor)など,同一のものとみなせばナンセンスと思われるクラス内スイッチも有効なことがあり,また副作用プロフィールも多少異なる〕.以下に代表的なものを概説する.

B消化器症状

 抗コリン作用に基づく口渇や便秘,セロトニン性作用による嘔気や嘔吐,また便秘・下痢はきわめて頻繁に認める(下痢・便秘は一見相反するようにみえるが,過敏性腸症候群でも両方認められる).生活習慣指導や,場合により薬物療法(便秘の場合水分,運動,食物繊維や,新規作用機序の薬剤が増えつつある下剤)で対応することが多いと推察される.

C泌尿生殖器症状

 抗コリン作用に基づく排尿困難(重症例の尿閉はmedical emergency)は代表的である.またとりわけセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:serotonin noradrenaline reuptake inhibitor)では,ノル

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