診療支援
治療

精神疾患の早期介入・支援
early intervention/support in mental health
水野雅文
(東京都立松沢病院・院長)

ニュートピックス

・学習指導要領の改訂により,2022年度から高等学校の科目「保健体育」において「精神疾患の予防と回復」についての授業が始まり,うつ病,統合失調症,不安症,摂食症などの代表的な精神疾患の特徴について学ぶことになった.保健体育の授業における集団教育と,養護教諭などによる個別指導の両輪の連携が重要になる.

治療のポイント

・精神疾患に対する差別,偏見をなくし,誰もがかかりうる疾患として認識し,より早い段階で適切な支援を受けられる社会を目指すこと.

・不登校やひきこもりなどにおいては,本人の困っていることを傾聴し,思春期の心性に配慮しながら信頼関係を築くこと.

・本人,保護者,担任教師,養護教諭,スクールカウンセラー,あるいは産業医や産業保健師,かかりつけ医や精神科専門医などのさまざまな連携を発展させることが重要である.

◆病態と診断

A病態

・精神疾患の75%は24歳頃までに発症することから,児童・思春期における不安,抑うつ,睡眠障害などの一般的な精神症状に対して,十分な観察と支援が重要である.発症を遅延できればその間にも就学や就労の経験を積め,顕在発症したあとの社会復帰もより容易になる.

・わが国の若年者(40歳以下)の死因の1位は自殺である.背景にはうつ状態の関与が大きく,気軽に相談できる機関が必要である.

・ひきこもりや不登校など,集団に馴染めず,社会的に孤立している当事者や家族への支援が整うことが望まれる.

B診断

・DSM-5において,「今後の研究のための病態」に位置づけられた減弱精神症症候群(準精神症症候群)は,妄想,幻覚,発語の統合不全のうちの1つが弱い形で過去1年の間に始まった結果,苦痛が生じ能力を低下させている状態である.1~3年で20~30%が精神症水準に至る.統合失調症に限らず,抑うつ症,双極症に至ることもある.

・神経発達症の鑑別は重要であり,親からの情報に加えて

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