診療支援
治療

骨折の保存的治療
conservative treatment for fractures
松田浩美
(東京大学医学部附属病院・救急・集中治療科)

◆病態と診断

A病態

・骨折は保存的治療可能なもの,手術適応なもの,controversialなものに大別される.

・非常に大まかな保存的治療を行う基準として,まず閉鎖骨折である(開放骨折ではない)ことが前提である.次に骨折部の転位が許容できるもしくは整復で安定化する,関節面の骨折がないか,あっても問題ない程度の大きさである,保存的治療で変形性関節症や偽関節などの後遺症が起きるおそれが低い,神経・血管・腱損傷がない,既往症などで外科的治療にリスクがあるなどがあげられる.

B診断

・骨折を疑った場合にはその部位の2方向以上のX線撮影をまず行い,骨折部の状態を確認する.小児の場合,成長の個人差で骨折が判断しにくいことも多いため,健側の撮影も行う.

・ほかにもCT,MRI,超音波などで診断することもある.

◆治療方針

A安静・経過観察

 体幹では転位がないもしくは軽微な骨盤骨折や,バストバンドでの固定が有効ではない肋骨骨折,四肢では多くの足趾末節骨骨折などは,安静臥床や経過観察のみで治療を行うことができる.

B牽引

 主に小児の四肢骨折で整復位維持目的に用いられる.

Cギプス(gips)

 ドイツ語で石膏の意.近年は石膏ではなく,プラスチックギプス(図a)が主に使用されている.いわゆる添え木として使用する副子(シーネ,シャーレ)と,全周性に固定する包帯がある.

 包帯固定(図a)のほうが固定性が強いが,神経圧迫やギプスコンパートメント症候群のリスクがある.受傷直後で腫脹が強い場合,まず副子固定(図b)を行い,1週間程度経過し腫脹軽快後に包帯固定に変更することも多い.指骨骨折ではアルフェンスシーネ(図c)を用いることが多い.

D装具

 体幹部では脊椎骨折に対する体幹装具,肋骨骨折に対するバストバンド(図d),鎖骨骨折に対するクラビクルバンド(図e)などがある.四肢では上腕骨骨幹部骨折に対するfunct

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