◆病態と診断
・転倒や転落で,手をつく,肘をつくなどの外傷で生じることがほとんどである.
・単純X線像(図)による骨折の検出には,多方向撮影や,対側との比較が有用である.
・骨折型・脱臼の診断には,正確な正側の2方向の単純X線像を撮影することが大切である.
・関節内血腫を反映したfat pad signだけが単純X線像の骨折の所見であることも多い.
・骨折型の同定や転位の程度の判定にはCTが有用である.
・軟骨部分の骨折の診断にはMRIや超音波診断装置が有用である.
A上腕骨顆上骨折
・小児肘関節周囲骨折で最も多い.遠位骨片が背側に転位する伸展型が大半を占める.
・転位の大きい骨折では,血管・神経損傷の可能性があり,あれば緊急処置を要する.
・上腕骨顆上骨折を疑う場合,まず麻痺や循環障害の有無を確認する.
・腫脹が強い場合,コンパートメント症候群の発生に注意が必要である.
B上腕骨外側顆骨折
・外側上顆から関節面に至る成長軟骨板を分断する骨折である.
・軟骨部分の骨折が多く,上腕骨遠位骨端離開,T型骨折との鑑別が問題となる.鑑別にはMRIが有用である.
・転位の程度で手術適応が決まるが,その判定にはCTが有用である.
C上腕骨内側上顆骨折
・転倒,転落以外に投球動作など肘への外反力で生じる,内側側副靭帯と屈筋群による裂離骨折である.
・正側の単純X線像だけでは転位を過小評価することがある.CTで正確な評価ができる.
D橈骨頸部骨折
・若年児では軟骨成分が大半の橈骨頭が転位する骨折で,転位が小さいと診断が難しい.
・転位程度の判定には,橈骨に対する回旋の多方向撮影が必要である.
・軸圧と外反力で生じるため,上腕骨内側上顆骨折や肘頭骨折の合併に注意する.
E肘頭骨折
・肘を打撲して起こることが多い.
・診断には,前腕に対する正側の単純X線像が必要である.
Fモンテジア脱臼骨折
・尺骨の骨折に橈骨頭の脱臼が合併する損傷である.橈骨頭