頻度 よくみる
治療のポイント
・通常,肘部に腫脹や発赤はないので,これらを認めるときには骨折を疑う.
・患児の手を握手するように握り,反対の手の母指で橈骨頭を触れるように肘を把持し,患肢を回内あるいは回外しながら肘を伸展し,その後に屈曲して整復する.
・1回の徒手整復で整復されることが多い.
・整復時はクリックを指先に感じることが多い.
・整復後は外固定は不要である.
◆病態と診断
A病態
・手を引かれる肢位,すなわち,肘関節伸展・前腕回内位で前腕が遠位方向に牽引されると,橈骨頭を被覆している輪状靭帯が近位方向に移動する.
・牽引が除かれると上腕骨小頭と橈骨間(橈骨上腕関節)前面に輪状靭帯が嵌頓する.
・近年,エコーにより輪状靭帯が回外筋とともに腕橈関節に嵌頓した状態が肘内障であると証明された.
B診断
・受傷機転は,手を引いていて転びそうになった患児の手を牽引したときなどが多い.この場合は受傷機転から診断は容易である.患肢は下垂して,前腕は回内位をとり,動かそうとしない.患児は肘あるいは手に疼痛を訴える.通常,肘部外観は正常で腫脹,発赤などはない.
・患児が布団の上に寝転びごろごろ転がって1人で遊んでいて突然泣き出したとするエピソードもある.これは,患児の背中と布団の間に前腕から手部が挟まった状態で体が回転することにより,手部が引かれる状態となるためと考えられる.
・転倒した患児の手を引いて起こした場合などは転倒時の受傷と牽引時の受傷の2つが考えられ,骨折との鑑別が必要となる.
◆治療方針
受傷機転から肘内障であると考えられるときには徒手整復を試みる.一方,肘関節部の腫脹,発赤や転倒受傷など,骨折の可能性があるときには最初にX線検査を行う.
A徒手整復
徒手整復は容易である.回内法と回外法がある.回内法は特に有効で,患児の手を握手するように握り,反対の手の母指で橈骨頭を触れるようにして肘を把持し患肢を回