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治療のポイント
・診断では問診や理学および画像所見などから不安定性の種類と程度を評価し,不安定性が軽度な場合は保存治療,それ以外は手術治療が適応となる.
・肘関節(亜)脱臼を伴う場合には可及的すみやかに徒手整復術を行うが,整復不能な症例では観血的整復術が必要であるため専門医に紹介する.
◆病態と診断
A病態
・外傷などにより生じる急性の不安定症と慢性のものがあるが,後者では専門医による診断・治療が必要であり,ここでは前者につき述べる.
・急性の不安定症には,靭帯性要素のみが破綻して起こるsimple elbow instabilityと,靭帯性要素のみならず1つ以上の骨性要素の破綻を伴うcomplex elbow instabilityがある.
B診断
・問診では受傷時の肢位や外力の強さ・方向などを詳しく聴取する.理学所見としては腫脹,圧痛,運動時痛,皮下出血などがどの部位にどの程度存在するかが重要である.
・高エネルギー外傷の場合には肘周辺の開放創などの皮膚状態,著明な疼痛などのコンパートメント症候群を疑う徴候,神経血管損傷の有無などに注意する.
・画像所見では単純X線,場合によってはCT検査を行う.
◆治療方針
肘関節(亜)脱臼を伴う場合には可及的すみやかに徒手整復術を行ったのち,後述する不安定性の評価を行う.徒手整復術は,整復操作に伴う関節軟骨の損傷などを避けるため,原則として伝達麻酔下に行うほうが安全である.
A徒手整復法(DePalma法)
最も頻度の高い後側方脱臼では,肘関節屈曲約70度,前腕回外位とし,皮下に触知可能である肘頭をコントロールしながら前腕を長軸方向に牽引することで比較的容易に整復される.整復後には単純X線撮影で整復位を確認するが,整復不能もしくは整復位不良な場合には観血的整復術が必要であるため専門医に紹介する.