頻度 ときどきみる
治療のポイント
・骨折の転位がわずかで安定な場合は,ギプス固定やシーネ固定など保存的に治療可能であるが,その頻度は少ない.
・骨折部が転位した不安定な骨折では,関節面の解剖学的位置,アライメントと短縮を整復するために手術療法が必要である.
・膝関節の拘縮を予防するために,膝関節の早期可動域訓練を可能とする,強固な固定が必要である.
◆病態と診断
A病態
・大腿骨遠位部,脛骨近位部と膝蓋骨で構成される膝関節内とその周囲に骨折線が及ぶ症例の総称を,膝関節周囲骨折という.
・脱臼骨折では神経血管損傷,膝蓋骨骨折では伸筋機構の破綻,脛骨近位部骨折では膝関節靭帯損傷の合併など,軟部組織損傷を合併することがある.
B診断
・問診で受傷時の状況を聞き,外傷機転を診断することは,重症度を理解するために必要である.
・膝関節のX線検査は,骨折の有無,損傷形態と範囲を詳細に把握して治療計画を立てるためには必要である.
・関節面や粉砕骨片の詳細を知るためには,冠状面と矢状面を中心にしたMPR(multi-planar reconstruction)-CTが有効な手段となる.
・脱臼骨折や大きく転位した骨折などでは,末梢循環障害や下腿コンパートメント症候群といった緊急外科的処置を必要とする合併症を見逃さない.
◆治療方針
膝関節周囲骨折治療の目的は,正常な膝関節機能への早期回復である.骨癒合が得られるまで長期間の外固定を行うことは膝関節拘縮の原因となるため,できる限り早期に膝関節運動を可能とする治療法を選択すべきである.
A保存的治療
1.適応
1)骨折部の転位がほとんどなく安定型の骨折
2)患者の全身状態,著明な骨粗鬆症合併例,軟部組織の状態を考慮して,手術療法の施行が不可能と判断される症例
2.保存的治療の実際
外固定による膝関節の固定を一定期間行う.骨折部位によって,固定範囲は大腿骨近位部から足関節を越えて足