治療のポイント
・尿閉,尿検査のための採尿,手術後など全身管理のための時間尿量の把握が必要なときなどに行う.
・外傷による尿道損傷や急性前立腺炎が明らかな場合の導尿は慎重に行う必要がある.
・適切なサイズのカテーテル(12~16F)を用いる.細すぎるとカテーテルの硬度が足らず,かえって入れにくい場合がある.
・導尿が不可能な場合には膀胱穿刺や膀胱瘻造設術を考慮することも必要である.
◆病態と診断
A病態
・前立腺肥大症に伴う膀胱出口部閉塞,脊髄損傷などによる中枢神経障害,糖尿病,骨盤内手術後などの末梢神経障害による排尿筋低活動などによる尿の排出障害により,残尿量の増加や尿閉状態を呈する.
B診断
・尿閉状態であれば下腹部正中に膨隆する腫瘤として触れる.
・エコーでは尿が多量に貯留した膀胱が確認できる.また排尿後にエコーで膀胱サイズを測定すれば残尿量が推定可能である(残尿量mL=左右径cm×縦径cm×前後径cm÷2).
◆治療方針
A導尿法
ネラトンカテーテルまたはフォーリーカテーテルを用いる.男性で挿入しにくいときにはチーマンカテーテルを用いる場合もある.
1.男性の場合
術者は患者の右側に立ち,左手中指と環指で陰茎をまっすぐ引き上げ,右手で鑷子をもちポビドンヨード,クロルヘキシジン液などの非刺激性の消毒液で外尿道口を消毒する.左手母指と示指とで外尿道口を開きながら潤滑剤を十分に付着させたカテーテルを挿入する.カテーテル先端が尿道球部に到達するとやや抵抗を感じるが,ゆっくりとカテーテルを進めると膀胱に到達し尿が流出してくる.挿入しにくい場合には注射器を用いてリドカインゼリーを尿道内に注入すると挿入が容易になる.フォーリーカテーテルを留置する場合には必ずカテーテル基部まで十分に挿入し,尿の流出を確認したうえでゆっくりとカフを膨らませる.尿の流出が確認できない場合には膀胱洗浄を行い,注入した水が回収可能