診療支援
治療

膀胱憩室,膀胱瘤
bladder diverticulum and cystocele
中川 徹
(帝京大学主任教授・泌尿器科学)

Ⅰ.膀胱憩室

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治療のポイント

・残尿が少量で,結石・憩室内腫瘍や尿路感染がなければ,治療は不要である.

・前立腺肥大などの基礎疾患の治療後も多量の残尿や尿路感染の反復を認める場合は,膀胱憩室の治療適応となる.

◆病態と診断

A病態

・膀胱の固有筋層が部分的に菲薄化または欠失し,この脆弱化した部位の膀胱壁が,排尿時の膀胱内圧上昇に伴いヘルニア状に外方へ突出した状態を膀胱憩室という.

・高齢男性に多く,前立腺肥大症などの下部尿路通過障害が原因となる.

・憩室壁は筋層を欠くため排尿時に収縮できず,残尿量が増加する.

・憩室内に膀胱腫瘍を生じることがある.容易に壁外に進展しやすい.

・約10%は小児例で,尿管口の近傍・頭外側に発生する先天性のハッチ憩室や,後部尿道弁に伴う2次性の憩室がある.

B診断

・多くは無症状で,排尿困難などの下部尿路症状や尿路感染症の精査中に偶然指摘される.大きな憩室の場合,二段排尿や,残尿に伴う慢性的な尿路感染で発見されることがある.

・小児例は,急性の尿路感染症が診断の契機になる.

・蓄尿下の超音波検査,MRI,CTが有用である.

残尿は本疾患の主病態であり,残尿測定は必須である.

・憩室内の腫瘍の確認には膀胱鏡検査が必要である.

・小児の先天性膀胱憩室では,排尿時膀胱尿道造影を行い,同時に存在しうる膀胱尿管逆流を確認する.

◆治療方針

 残尿が少量で,結石・憩室内腫瘍や尿路感染がなければ,治療は不要である.前立腺肥大などの基礎疾患の治療を優先する.基礎疾患の治療後も多量の残尿や尿路感染の反復を認める場合は,膀胱憩室の治療適応である.経尿道的な膀胱上皮の電気凝固や憩室口切開を行う.憩室が大きい場合は,外科的切除も検討する.残尿が多いが高齢などで手術困難な場合は,清潔間欠導尿を指導する.

■専門医へのコンサルト

・多量の残尿(目安として100mL以上),反復する尿路感染,憩室内に結

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