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GL泌尿器外傷診療ガイドライン 2022年版
ニュートピックス
・2022年8月に泌尿器科全般にわたる初の外傷ガイドラインが作成され,膀胱,尿道,精巣,陰茎などの外傷に対するそれぞれの診療アルゴリズムがわかりやすくまとめられている.
治療のポイント
・外傷性の膀胱損傷,尿道損傷,陰茎損傷は,致死的な病態になることは少ないが,外科的処置が必要なことが多い.
・救命措置が済み全身状態が落ち着いた段階で専門医へコンサルトすることが重要である.
・尿道カテーテル留置が困難な場合や出血した場合には,無理をせず専門医に紹介すべきである.
Ⅰ.膀胱損傷
◆病態と診断
A病態
・膀胱損傷は医原性と非医原性に分類される.医原性の膀胱損傷の原因は,開腹や腹腔鏡手術,経尿道的手術などが多い.非医原性の膀胱損傷は,鈍的外傷と穿通性外傷に分類される.
・膀胱損傷は,発生部位により腹膜内損傷と腹膜外損傷に分類される.
B診断
・膀胱損傷の最も有用な臨床所見は,肉眼的血尿である.
・膀胱損傷の画像診断には,CT膀胱造影と逆行性膀胱造影が高い感度と特異度をもち有用である.
◆治療方針
鈍的外傷や腹膜外の膀胱損傷の場合には,尿道カテーテル留置で保存的加療を行う.数週間経過して損傷部位の改善がなければ外科的修復を考慮する.腹膜内破裂の場合には,尿道カテーテル留置による保存的加療で治癒する可能性が低いため,外科的治療(膀胱修復術)を行う.
Ⅱ.尿道損傷
◆病態と診断
A病態
・尿道損傷も,医原性と非医原性に分類される.医原性の尿道損傷は,尿道カテーテル挿入時や長期留置,経尿道的手術時に発生し,患者は高齢者が多い.非医原性の尿道損傷は交通外傷や労働災害が原因で若年者が多い.
・女性の尿道損傷はきわめてまれで,圧倒的に男性に多い.
B診断
・尿道カテーテル留置が困難である場合には尿道外傷を疑うべきである.
・尿道損傷の診断には,逆行性尿道造影