Ⅰ.腎の形態・位置異常
◆病態と診断
・両側の腎実質が融合したものを融合腎という.馬蹄腎は融合腎の代表的なもので,胎生期に左右の後腎の発生途中,何らかの原因により,両腎下極が正中線上の峡部(isthmus)で融合して馬蹄型を呈すもので,一般人口の0.25%に存在する.尿管が峡部前面を走るため,その圧迫により尿管の通過障害を生じ,水腎症,腎結石,腎盂腎炎などを合併しやすい.腹痛や発熱で発見される.身体を過剰に伸展すると腹痛が増強することをRovsing's signという.
・腎臓の一部ないし全体が横隔膜を越えて存在するものを胸部腎という.腎機能は正常だが,横隔膜異常を伴うことが多い.
◆治療方針
馬蹄腎が水腎症や腎結石のために強い症状を呈する場合には,峡部離断術などの手術適応となる.
Ⅱ.尿管の形態・位置異常
◆病態と診断
・下大静脈後尿管は,下大静脈の発生異常により右尿管が下大静脈の背側を回り,腹側に現れて下大静脈の右側に戻るという走行異常である.CTや逆行性腎盂造影などで尿管の走行を確認することで診断される.
・巨大尿管はさまざまな原因により尿管が著明に拡張した病態の総称である.閉塞性,逆流性,非閉塞性非逆流性に分類されるが,それぞれに原発性と続発性がある.これらの鑑別に利尿レノグラムやウィッタカー試験(Whitaker test)が行われることがあるが,絶対的なものではない.
◆治療方針
下大静脈後尿管で,下大静脈による圧迫のため著明な水腎症をきたす場合には,異常走行の尿管を切除し,正常な位置で端々吻合する.
非閉塞性の巨大尿管の多くは自然に軽減・消失するので経過観察する.閉塞性の巨大尿管で,尿路感染や腹痛などの有症状例や分腎機能の低下例では,通過障害部位の切除・拡張尿管の縫縮・尿管膀胱新吻合術が行われる.
Ⅲ.尿膜管遺残
◆病態と診断
・尿膜管の退縮過程が障害されると,尿膜管遺残としてさま